記事一覧

消費者金融業界の苦しい現状

二〇一〇年九月二十八日、大手消費者金融、武富士(本社・東京新宿区)が東京地裁に会社更生法の適用を申請し、事実上の経営破綻が明らかとなった。負債総額は四三三六億円。消費者金融各社については、すでに二~三年前から経営の危機が噂されていた。すでに二〇〇七年九月には、中堅の消費者金融クレディア(本社・静岡市)が七五七億円の負債を抱えて、やはり民事再生法の適用を申請した。また、大手では二〇〇九年にアイフル(本社・京都市)が「事業再生ADR」によって私的整理を開始、経営再建を進めている。かつては収益性の高さから優良企業と見られていた消費者金融各社は、二〇〇四年頃から次々と銀行の傘下に入っていった。

資金力を強化したい消費者金融と、リテール部門でのノウハウを獲得したい銀行の思惑が一致したような状況で、業務提携が進んだ。ところが、二〇〇六年一月に最高裁で、これまでは明確な法的判断がなされないまま運用されてきた「みなし弁済」を否定し、利息制限法を越える利息分について無効とする判決が下された。これによって「グレーゾーン金利」が否定されたことになり、利息制限法を越えて利用者が支払い続けていた、いわゆる過払い金の返還についての法的な根拠が得られたわけである。それまでも過払い請求というものは行われていたが、グレーゾーン金利を引き合いに出して支払いを拒絶、または消極的な態度しか取らない業者が少なくなかった。

また、顧客を電話でわざわざ呼び出し、「契約時の金利に対して異議を唱えない」などといった念書をわざわざ書かせる業者も存在した。また、貸金業者からの借り入れ契約を行う際、原則として契約時の金利がそのまま継続される。つまり、法律が改正され金利が引き下げられても、新たに契約を更新して金利の変更などを行わない限り、貸金業者は法律で定められた金利よりも高い利率で顧客から利息を取ることができたわけである。これなら、過払いに応じなければ以前と同じ利益を確保できることになる。それが、最高裁判決という法的根拠を得て消費者金融その他の貸金業者に対する過払い請求が急増。二〇〇六年四月から二〇〇九年八月までのわずか三年四ヶ月だけで、大手消費者金融四社への過払い金返済総額が一兆円を突破した。

すなわち、グレーゾーン金利が否定されたことにより、貸金業者は利息制限法と同じく年率二〇パーセント以下の金利を設定しなければならなくなり、収益力の低下を余儀なくされることになった。さらに、過払い請求を受けたら、これを拒絶することができなくなってしまったのである。これらによって、それまでは高収益を誇っていた消費者金融各社は軒並み大打撃を受け、アコムやアイフルは大幅減益となり、プロミスは赤字へと転落した。こうした事態に対して、あまりの想定外のことに戸惑ったのは消費者金融各社を傘下に収めた銀行だった。高収益が見込めるリテール部門を獲得したと思ったのが、わずか五年で利益を生み出すどころか、とんだ厄介者に変貌してしまったわけである。