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消費者金融業界の闇

かつて「武富士では武井保雄以外はすべてヒラ」と言われ、東証に上場した後も、悪い意味での個人商店的な体質を残したままだった。そして、武井氏のモットーが「絶対に他人を信用しない」。すなわち、すべての従業員は武井保雄氏に絶対服従を強要され、武井氏もまた幹部社員から新人まで、誰一人として信用も信頼もしていなかった。「ノルマ達成」「上司には絶対服従」といった不文律と、バキをはじめとする暴力による統制、すなわち恐怖政治によって社内を取りまとめていた。先述の裁判で出廷した武富士社員によるバキについての、「『ご指導』は『ご指導』です」という発言も、恐怖によって発言を封じられていた可能性が指摘される。しかし、恐怖による支配は、反感と嫌悪、そして離反を生み出す。

実際、武富士の渉外部課長だった中川一博氏によって武富士が組織として行った数々の不正行為を証明する内部資料、通称「中川資料」が外部に流出した。そして、ジャーナリスト山岡俊介氏に対する盗聴事件などが次々と明らかになっていった。そのあたりについては、山岡氏の著書『銀バエ 実録武富士盗聴事件』に詳しく報告されている。さらに付け加えると、武富士は言論弾圧と呼びうるような、マスコミやジャーナリストに対する圧力や妨害活動も重ねてきたのである。武富士のマスコミ対策は、まずは大量の広告費投入であった。テレビや新聞などの大メディアは、とにかく広告のクライアントや代理店には非常に弱い。いかに社会的な問題を起こしていようとも、大手クライアントというだけで記事や報道にストップがかかることは珍しくない。

最近の例では、秋葉原無差別殺傷事件で、犯人が働いていた自動車関連工場がトヨタ自動車と関係があったことを、ほとんどのメディアが報道しなかった。庶民の人権の配慮をしばしば怠るような大メディアも、大手クライアントには神経質なほどに気を使う。こうしたメディアの体質を読み取り、武富士はカネでマスコミを黙らせ続けたのである。そして、少しでも気に入らないメディアやジャーナリストには、さまざまな手を使って圧力や嫌がらせを行った。前述の三宅氏のほか、山岡俊介氏や寺澤有氏といったジャーナリストたちも、次々に裁判に訴えられた。山岡氏は自宅の電話を盗聴され、寺澤氏はインターネット上の掲示板で誹誇中傷された。

武富士が訴訟という手段に出るケースは、マスコミなどでほとんど報道されることはなかったが、実際にはかなり多く発生している。武富士はかつて、雑誌などに掲載された自らに対する批判的な記事について、目に留まったものはすぐさま裁判に訴える手法を採っていたのである。一般に、事実に反するなどの内容が書かれた記事が出回った場合、当事者である企業等は、まず訂正記事や謝罪広告を要求するのが普通である。ところが武富士の場合は、担当編集者らに武富士の顧問弁護士から抗議の書面が内容証明郵便で送りつけられ、間髪入れずに訴訟が起こされるケースが非常に多い。しかも、その訴状の内容というのが、「あの記事は事実無根だ」と、全面否定するものばかりである。

通常、記事に対する訴訟の場合、たとえば、「八月三〇日発売の『週刊××』の×ぺージの○行目の」というように非常に細かく指摘するのが一般的だ。しかし武富士の場合は、「とにかく全部ウソだ、デタラメだ」とすべてを否定する。どの部分がどう間違っているのか、どのように事実関係との相違が存在するのか、いかなる表現が現実と異なっているのかなど、具体的なことは何一つ指摘しない。ただ「間違いだ、事実無根だ」と叫ぶだけである。これはきわめてズサンなやり方としか言いようがない。記事内容などよく確かめることもなく、気に入らない、あるいはそう感じられるような報道や紹介記事を、手当たり次第に訴えていたとしか考えられないのである。