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「手紙や宅配便を受け取ることができなくなる」という事実はない

市販の自己破産本などには、破産者が受ける制限として「通信の秘密の制限」が挙げられている。つまり、「破産者に送付された郵便物などは、すべて破産管財人に配達され、破産者本人には直接届けられない。そして、破産管財人は破産者の郵便物を自由に開封できる」というような説明がなされている。これを読んで、「プライベートな手紙まで開けられてしまうなら、自己破産を思いとどまろう」とか、「年賀状や暑中見舞いはどうなるのか」「宅配便はどうなるのか」などと思い悩んでしまう人もいるかもしれない。だが、冷静になって読み返してみれば、「破産管財人」とあるのがわかる。

つまり、この制限というのは、破産管財人が選出される「異時廃止破産」、法人やめぼしい財産がある破産事件のケースのみに該当するのであって、財産を持たない個人の破産である「同時廃止破産」の場合には、まったく関係がない。すなわち、個人の自己破産の場合には、郵送物に関する制限は何一つない。郵便物はもちろん、宅配便もそれまでと同じく自由に受け取ることができるのである。一切、気にする必要はない。弁護士などが書いた自己破産の手引書などには、「破産した際のデメリット」として、「説明義務」「住居の制限」、そしてこの「通信の秘密の制限」などが列記されているが、そのほとんどは破産管財人が関係するものであって、同時廃止の場合にはまったく関係ない。この点は注意を要する。

ほかにも、「職業制限」などのように、破産後のデメリットと思われているものがいくつかあるが、いずれも気にする必要のないものばかりである。以前は、アパートなどの貸借人が破産した場合には、家主が一方的に解約を突きつけることができた。だが、それはすでに過去の話である。二〇〇五年の「破産法」改正によって、その根拠となる「民法」六二一条は削除された。現在では、破産したとしても、アパートやマンションを追い出されることは絶対にない。また、生活保護を受給する際に転居を指導されるようなことから、破産に際しても転居するよう強制されると思っている向きがあるが、それはまったくの誤解である。生活保護の場合には、家賃が自治体によって定められた住居費の範囲内に制限されるために転居せざるをえない場合が発生するが、破産についてはそのような制限は一切ない。