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社会問題化した違法な取り立て行為とは

わたしも経験があるが、武富士の店舗における対応はとても親切である。従業員が笑顔でにこやかに対応する。契約しなくとも、ちょっとした小物までサービスしてくれる。わたしも、「またお越しください」とキャンディーと何か小物をもらったことがある。そうした「ちょっとした小物」であっても、「サラ金は怖い」と思っている消費者にとっては、効果は小さくはない。「親切そうだから、利用してみよう」という気持ちが芽生えてくるものだ。しかし、それはあくまで借りさせるための演出にほかならない。返済能力を超えた過剰な貸付は、当然のように返済不能を生じさせる。すると、今度は手のひらを返したように執拗な取り立てに転じるのだ。消費者金融だからといって、すべての業者が必ずしも取り立てが厳しいとは限らない。

だが、武富士の場合はとくにやり方が激しく、しかも陰湿だったという証言は少なくない。「三時間くらい平気で電話をかけてくるし、切らせてくれない」(『武富士追及』)というケースのほか、「口汚くののしられる」「一日に何度も電話が来る」などの事例が珍しくなかった。わたしもかつて、次のような体験を聞いたことがある。「電話はものすごく高圧的なものでした。『返済日は過ぎている。どうするんだ』『いつ払うんだ。何時頃に入金するんだ』と、ほとんど脅すような声で繰り返しました。その時、電車の中で携帯(電話)にかかってきたんですが、今電車の中ですからすぐにかけ直しますと言っても、まったく聞いてくれません。そうしているうちに、電車がトンネルに入ったために電話が切れてしまったんです。

すると、しばらくしてまた電話がかかってきて、『いきなり電話を切るとは、いったいどういう了見だ』なんて、きつい口調でさんざん言われました」このように、顧客の事情などまったく無視して、執拗に督促を続ける。経験した者なら理解できようが、こういう取り立てはたった一度でも心身にかなりの打撃を受ける。まして、継続的に行われれば、精神や肉体に支障を生じてもおかしくはない。わたしが話を聞いた人の中には「(債務整理の前は)怖くて電話に出ることが絶対にできなかった。玄関のチャイムや、ちょっとした物音も怖かった」という三十代の主婦もいた。武富士はそうした執拗な取り立て行為を数多く行っており、PDSDなどの実害が起きている事例も少なくないことが、三宅氏のルポをはじめとしていくつも確認されている。

そうした度重なる不正な督促はもとより、違法である家族などへの第三者請求も頻繁に行われた。現在でこそ、本人以外に対する債務の請求は行われることはまずないが、ほんの十年ほど前まで、消費者金融やローン会社、クレジットカード会社などは平気で違法な第三者請求を行っていた。そして、武富士でも同様に、そして他社よりも過酷に続けられた。「子供の借金を親が返すのは当然でしょう」そんな台詞に惑わされ、武富士に現金を支払い続けていた債務者の家族は多い。しかし、たとえ実の親子であっても、連帯保証人である場合などを除いては、本人以外に返済の責任も義務もない。親子や兄弟であっても、借金の肩代わりをする必要などどこにもないのである。

にもかかわらず、武富士は「取れるところなら、どこでもいいからむしり取れ」とばかりに、債務者の親族に対して、電話や訪問といった行為を繰り返していた。「武富士残酷物語」で三宅氏がレポートした実例では、武富士の社員が債務者の子供である小学生を待ち伏せして本人の居場所や連絡先をしつこく聞き出そうとしたという。返せなくなった債務者は、ほかの消費者金融やカード会社から借りて返済する。そうやって、たちまち借金が増えてしまう。マスコミなどは「借金が雪だるま式に増える」などと表現するが、いかに以前の消費者金融が高利といっても、一、二社程度から借りただけではすぐに借金が増えることはない。

すでに借りた分か返せなくなって、他社から借りる。そういう事態が始まると、一気に借金は膨れ上がってしまう。そうした多重債務のメカニズムを、大新聞やテレビはほとんど報道しない。さらに、違法な取り立てだけではなく、武富士は信じられないような不法行為、不正行為も行っていた。たとえば、債務整理によって元本は返済済み、過払い金が発生している債務者に対して、なおも返済を迫ったケースや、完済している顧客に何の連絡もせず、払わなくてもよいはずの現金を延々と支払わせていたケースも確認されている。