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武富士破綻の元凶とは

武富士は一一〇〇万円の損害賠償と謝罪広告を求める訴訟を二〇〇二年の十月に起こしている。ところがこの記事、内容をよく読んでみると武井氏と武富士に対する賛辞以外の何者でもない。批判的な記述など、どこにも見当たらない。それどころか、武井氏を「もう一人の渋沢栄一」などと、明治の大実業家になぞらえるまでの賞賛記事なのだ。にもかかわらず、単に「狂気」という単語が気に入らなかったという理由から、訴訟という手段を講じている。この訴えは後に取り下げられたものの、内容に目を通すこともなくいきなり訴訟を起こすこと自体、病的といっても過言ではない。まさに「武富士に対する批判は、わずかでも許さない」といった態度であった。

また、請求金額の大きさも、武富士が起こした裁判の特徴である。たとえば、『週刊金曜日』に連載された「武富士残酷物語」「武富士社員残酷物語」に対して、武富士が執筆者の三宅氏と発行元を相手に二〇〇三年三月に起こした名誉毀損訴訟では、請求金額は一億一千万円だった。その請求額の大きさから、「都合の悪い発言をことごとく圧殺しようとするものではないのか」と、関係者やジャーナリストたちは口をそろえる。これらの裁判では、武富士はことごとく敗訴、または和解に応じるという結果に終わっている。法廷の場で、武富士の言い分はほとんどが退けられたということである。そしてしめくくりが、創業者である故・武井保雄氏に対する「個人崇拝」の強要だ。

全国の店舗、営業所には武井氏の写真が掲げられ、朝礼などの際には従業員が最敬礼。また、ボーナスを支給した社員には、武井氏への「お礼の手紙」を強制的に書かせていた。当時、武富士は「強制ではない」などと主張していたが、「書かないわけにはいかない」という状況だった。しかも、その「お礼の手紙」をうっかり茶封筒に入れて送ってしまったため、支社幹部に呼び出され、社内の会議室に監禁されて「なめとんのか」などと暴言を浴びせられながら暴行を加えられ、退社を強要された入社一年の社員の例もある。業務とはまったく関係のないはずの、まして強制ではないという「お礼の手紙」に茶封筒を使っただけでクビにされるという現実がそこにあった。尋常ではないとしか考えられない。

そうした数々の不法行為、不正行為を繰り返してきた。しかも、裁判になっても、武富士そして武井氏は、「知らない」「やっていない」「事実無根」を繰り返した。その様子は、あたかも証拠のないものは事実無根で通すかのようだった。しかし、実際には証拠は出てくる。元社員による証言も法廷で述べられる。関係者の肉声や会話が収録された録音テープも法廷に流れる。それでも、武富士や武井氏は「知らない」を繰り返した。もっとも、記述のように社員は武井氏による恐怖政治によって口を封じられていた可能性がある。一方、武井氏の発言は、明らかに不自然なものが数多くあった。

たとえば、自社ホームページでジャーナリスト山岡俊介氏に対する誹誇中傷が行われていたことについて法廷で質問を受けると、武井氏は次のように答えた。「武富士にホームページがあることを、私は知らなかった」わたしもその言葉を傍聴席から直接聞いて、他のジャーナリストたちと唖然としたことを覚えている。盗聴までして社員を管理し、タイトルが気に入らないからと言って裁判に訴えるほどの武井氏が、自社ホームページがあることを知らなかったなどということがあるだろうか。こういう不自然としか考えられないことをしてきたのが、創業者の武井保雄氏であり、その体質で支配され、運営されていたのが武富士という組織なのである。そのほかにも、京都での土地取引に関する一連の事件や、警察や広告代理店・電通との関係など、武富士や武井氏が関係した事件や疑惑は数知れない。「そうしたコンプライアンスを完全に無視したことを、何の反省もなく長年にわたって続けていたわけです。

そんな組織が、企業として存続できるわけがありません。武富士の破綻は、当然の結果でしょう」(三宅氏)三宅氏は「何の反省もなく」と述べたのには、明確な理由がある。二〇〇三年の春から秋にかけて。そして、二〇〇三年十一月に元幹部、十二月にはトップの武井保雄が逮捕されるに及び、武富士はTVCMおよび新聞や雑誌での営業広告を中止。自社ホームページ上でも弁明するとともに、新聞各紙に事件に対する謝罪広告を掲載するなど、全社挙げての「謝罪と反省」を形に表した。武富士の社員たちは、「武富士クリーン運動」と書かれたタスキをかけて街頭でティッシュを配った。しかし、事件後も武井氏は、武富士の関連会社が所有する社員研修施設「真正館」を自宅として使うなどの公私混同を続け、次男である武井健晃氏を取締役に就任させるなど、反省しているとはいえないような行為を続けたのである。

消費者金融業界の闇

かつて「武富士では武井保雄以外はすべてヒラ」と言われ、東証に上場した後も、悪い意味での個人商店的な体質を残したままだった。そして、武井氏のモットーが「絶対に他人を信用しない」。すなわち、すべての従業員は武井保雄氏に絶対服従を強要され、武井氏もまた幹部社員から新人まで、誰一人として信用も信頼もしていなかった。「ノルマ達成」「上司には絶対服従」といった不文律と、バキをはじめとする暴力による統制、すなわち恐怖政治によって社内を取りまとめていた。先述の裁判で出廷した武富士社員によるバキについての、「『ご指導』は『ご指導』です」という発言も、恐怖によって発言を封じられていた可能性が指摘される。しかし、恐怖による支配は、反感と嫌悪、そして離反を生み出す。

実際、武富士の渉外部課長だった中川一博氏によって武富士が組織として行った数々の不正行為を証明する内部資料、通称「中川資料」が外部に流出した。そして、ジャーナリスト山岡俊介氏に対する盗聴事件などが次々と明らかになっていった。そのあたりについては、山岡氏の著書『銀バエ 実録武富士盗聴事件』に詳しく報告されている。さらに付け加えると、武富士は言論弾圧と呼びうるような、マスコミやジャーナリストに対する圧力や妨害活動も重ねてきたのである。武富士のマスコミ対策は、まずは大量の広告費投入であった。テレビや新聞などの大メディアは、とにかく広告のクライアントや代理店には非常に弱い。いかに社会的な問題を起こしていようとも、大手クライアントというだけで記事や報道にストップがかかることは珍しくない。

最近の例では、秋葉原無差別殺傷事件で、犯人が働いていた自動車関連工場がトヨタ自動車と関係があったことを、ほとんどのメディアが報道しなかった。庶民の人権の配慮をしばしば怠るような大メディアも、大手クライアントには神経質なほどに気を使う。こうしたメディアの体質を読み取り、武富士はカネでマスコミを黙らせ続けたのである。そして、少しでも気に入らないメディアやジャーナリストには、さまざまな手を使って圧力や嫌がらせを行った。前述の三宅氏のほか、山岡俊介氏や寺澤有氏といったジャーナリストたちも、次々に裁判に訴えられた。山岡氏は自宅の電話を盗聴され、寺澤氏はインターネット上の掲示板で誹誇中傷された。

武富士が訴訟という手段に出るケースは、マスコミなどでほとんど報道されることはなかったが、実際にはかなり多く発生している。武富士はかつて、雑誌などに掲載された自らに対する批判的な記事について、目に留まったものはすぐさま裁判に訴える手法を採っていたのである。一般に、事実に反するなどの内容が書かれた記事が出回った場合、当事者である企業等は、まず訂正記事や謝罪広告を要求するのが普通である。ところが武富士の場合は、担当編集者らに武富士の顧問弁護士から抗議の書面が内容証明郵便で送りつけられ、間髪入れずに訴訟が起こされるケースが非常に多い。しかも、その訴状の内容というのが、「あの記事は事実無根だ」と、全面否定するものばかりである。

通常、記事に対する訴訟の場合、たとえば、「八月三〇日発売の『週刊××』の×ぺージの○行目の」というように非常に細かく指摘するのが一般的だ。しかし武富士の場合は、「とにかく全部ウソだ、デタラメだ」とすべてを否定する。どの部分がどう間違っているのか、どのように事実関係との相違が存在するのか、いかなる表現が現実と異なっているのかなど、具体的なことは何一つ指摘しない。ただ「間違いだ、事実無根だ」と叫ぶだけである。これはきわめてズサンなやり方としか言いようがない。記事内容などよく確かめることもなく、気に入らない、あるいはそう感じられるような報道や紹介記事を、手当たり次第に訴えていたとしか考えられないのである。

武富士が行っていた違法行為とは

数々の違法行為は、単発的なものではない。たまたま不心得な社員が引き起こした個人的な不祥事などではない。武富士という組織の体質が、必然的に生み出したものと考えられる。武富士では、社員や営業所には過酷なノルマが課せられていた。しかも、そのノルマが達成できない場合には、幹部社員による暴言や暴行が常習的に行われていたことが、やはり数々の証言によって明らかになっている。「営業ノルマを達成できなくて怒鳴られるくらい、どこの企業でも同じだ」と言われるかもしれない。たしかに、営業部隊はそういう傾向を持っていることがしばしばある。わたしも以前、営業マンを経験しているので、上司から暴言の類を浴びせられたことは少なくない。

しかし、武富士の場合、虐待に等しかった。「バカ」「死ね」などといった暴言とともに、殴る、蹴るといった傷害行為は日常茶飯事だったという。そして、少しでも反発したりすれば、即刻クビである。こうした暴行は「バキ」と呼ばれ、武富士社内では「指導」とされていた。しかし、その内容は社員指導などとは呼べない常軌を逸脱したものであった。その「バキ」や、数々の就業員への虐待は、何か基準や指針があったわけではない。ノルマが達成できないだけでなく、社内の決め事を遵守しない、上司に逆らったなどといった、あいまいで場当たり的に行われたとしか思えないものも数多くあった。

たとえば、妊娠していて、しかも出産間近の女性社員に、真夏の炎天下でのティッシュ配りを強要していた。また、社内の会議室などに盗聴器を設置し、社員の言動を逐一管理していた。もちろん、武井氏の意にそぐわない社員が、それによって制裁を加えられたことは想像に難くないが、むしろ盗聴までするほど社員を徹底して信用していなかったところに、武井氏の性質が窺える。およそ人格や人権を完全に無視していたとしか言いようがない。さて、「バキ」が実際に行われていたことは、裁判でも確認されている。

三宅氏によるルポ「武富士残酷物語」の裁判で、法廷では武井氏の次男で武富士取締役だった武井健晃氏による「バキ」の証拠テープが流された。ところが、被告側弁護士から「『バキ』と呼ばれるものは行われているのか?」という質問に、証人の武富士社員は「上司からご指導をいただくことがあります」というあいまいな答えのみ。さらに弁護士から「その『ご指導』とは?」という突っ込んだ問いにも、「はい、『ご指導』は『ご指導』です」と、説明にならない発言を繰り返すばかりであった。そうした創業者幹部による独裁的かつ感情的な管理体制のもととなったのは、創業者である故・武井保雄氏の考えが根底にあるといえよう。

社会問題化した違法な取り立て行為とは

わたしも経験があるが、武富士の店舗における対応はとても親切である。従業員が笑顔でにこやかに対応する。契約しなくとも、ちょっとした小物までサービスしてくれる。わたしも、「またお越しください」とキャンディーと何か小物をもらったことがある。そうした「ちょっとした小物」であっても、「サラ金は怖い」と思っている消費者にとっては、効果は小さくはない。「親切そうだから、利用してみよう」という気持ちが芽生えてくるものだ。しかし、それはあくまで借りさせるための演出にほかならない。返済能力を超えた過剰な貸付は、当然のように返済不能を生じさせる。すると、今度は手のひらを返したように執拗な取り立てに転じるのだ。消費者金融だからといって、すべての業者が必ずしも取り立てが厳しいとは限らない。

だが、武富士の場合はとくにやり方が激しく、しかも陰湿だったという証言は少なくない。「三時間くらい平気で電話をかけてくるし、切らせてくれない」(『武富士追及』)というケースのほか、「口汚くののしられる」「一日に何度も電話が来る」などの事例が珍しくなかった。わたしもかつて、次のような体験を聞いたことがある。「電話はものすごく高圧的なものでした。『返済日は過ぎている。どうするんだ』『いつ払うんだ。何時頃に入金するんだ』と、ほとんど脅すような声で繰り返しました。その時、電車の中で携帯(電話)にかかってきたんですが、今電車の中ですからすぐにかけ直しますと言っても、まったく聞いてくれません。そうしているうちに、電車がトンネルに入ったために電話が切れてしまったんです。

すると、しばらくしてまた電話がかかってきて、『いきなり電話を切るとは、いったいどういう了見だ』なんて、きつい口調でさんざん言われました」このように、顧客の事情などまったく無視して、執拗に督促を続ける。経験した者なら理解できようが、こういう取り立てはたった一度でも心身にかなりの打撃を受ける。まして、継続的に行われれば、精神や肉体に支障を生じてもおかしくはない。わたしが話を聞いた人の中には「(債務整理の前は)怖くて電話に出ることが絶対にできなかった。玄関のチャイムや、ちょっとした物音も怖かった」という三十代の主婦もいた。武富士はそうした執拗な取り立て行為を数多く行っており、PDSDなどの実害が起きている事例も少なくないことが、三宅氏のルポをはじめとしていくつも確認されている。

そうした度重なる不正な督促はもとより、違法である家族などへの第三者請求も頻繁に行われた。現在でこそ、本人以外に対する債務の請求は行われることはまずないが、ほんの十年ほど前まで、消費者金融やローン会社、クレジットカード会社などは平気で違法な第三者請求を行っていた。そして、武富士でも同様に、そして他社よりも過酷に続けられた。「子供の借金を親が返すのは当然でしょう」そんな台詞に惑わされ、武富士に現金を支払い続けていた債務者の家族は多い。しかし、たとえ実の親子であっても、連帯保証人である場合などを除いては、本人以外に返済の責任も義務もない。親子や兄弟であっても、借金の肩代わりをする必要などどこにもないのである。

にもかかわらず、武富士は「取れるところなら、どこでもいいからむしり取れ」とばかりに、債務者の親族に対して、電話や訪問といった行為を繰り返していた。「武富士残酷物語」で三宅氏がレポートした実例では、武富士の社員が債務者の子供である小学生を待ち伏せして本人の居場所や連絡先をしつこく聞き出そうとしたという。返せなくなった債務者は、ほかの消費者金融やカード会社から借りて返済する。そうやって、たちまち借金が増えてしまう。マスコミなどは「借金が雪だるま式に増える」などと表現するが、いかに以前の消費者金融が高利といっても、一、二社程度から借りただけではすぐに借金が増えることはない。

すでに借りた分か返せなくなって、他社から借りる。そういう事態が始まると、一気に借金は膨れ上がってしまう。そうした多重債務のメカニズムを、大新聞やテレビはほとんど報道しない。さらに、違法な取り立てだけではなく、武富士は信じられないような不法行為、不正行為も行っていた。たとえば、債務整理によって元本は返済済み、過払い金が発生している債務者に対して、なおも返済を迫ったケースや、完済している顧客に何の連絡もせず、払わなくてもよいはずの現金を延々と支払わせていたケースも確認されている。

盗聴・違法取り立て・過酷なノルマなどの不正・違法行為の歴史だった武富士

今回の破綻劇について、その原因をマスコミ各社はグレーゾーンの事実上の廃止と、それに伴う過払い金利返還の増加や収益力の低下などを挙げている。また、現在では多くの大手消費者金融各社が大手銀行の系列に入っているのに対し、武富士は独立系であることを指摘する声もある。さらに、今年六月に完全施行された改正貸金業法によって「とどめを刺された」との意見もある。しかし、ジャーナリストたちの中には、それ以上に「武富士の破綻は、むしろその社内体質に起因するもの」と指摘する声が多い。武富士についての記事「武富士残酷物語」によって同社から民事裁判を起こされ、その後勝訴したジャーナリストの三宅勝久氏は、「法改正などとはあまり関係なく、いわば当然の結果」と話す。

「武富士の破綻は、これまでやってきた数々の不正行為や不法行為、そして創業者一族によるワンマン経営が原因であることは間違いないでしょう」武富士では、九〇年代から多くの「噂」があった。取り立てが厳しいとか、社員が暴言や暴力を振るうとか、ヤクザと関係があるとかいう類のものである。しかし、上場企業ということや、いわゆる「武富士ダンサーズ」が登場する好感度の高いTVCMの影響などもあり、それらは噂に留まっていた。少なくとも、一般消費者にとって、武富士のイメージはそれほど悪くはなかった。ところが、数々の不適切な行いが三宅氏をけじめとする複数のジャーナリストによって明らかとなり、後述の「盗聴事件」の発覚に及んで、武富士の企業イメージは転落することとなる。

余談だが、当時ある高校では、TVCMの「武富士ダンス」を文化祭での出し物にすることに決まっていた。それが、事件の発覚によって中止するというハプニングまで起きている。武富士によるコンプライアンス無視、不正行為や不法行為は、顧客ばかりか社内でも横行していた。その実態については、三宅氏によるルポルタージュ、雑誌『週刊金曜日』に掲載され、『武富士追及』(リム出版新社)に収録された「武富士残酷物語」「武富士社員残酷物語」に具体的に描出されている。

まず、顧客に対しては、野放図で過剰な貸付と、威圧的で執拗な取り立てをはじめとする不法行為である。最初に、利用者の支払能力を無視して「とにかくどんどん貸す。客が要らないといっても貸し付ける」といった過剰貸し付けである。顧客が「一〇万円で十分」と希望しても、二〇万円、三〇万円、そして消費者金融では初回でも所得証明が不要な五〇万円まで借りるように勧める。というより、半ば無理やりに貸すのである。「何かの時の備えに」そんな甘い言葉で、とくに急ぎで必要でもないような現金を貸し付ける。似たような「過剰な貸付サービス」は大手消費者金融ではどこでもやっていたが、とくに武富士は顕著だったという。

消費者金融大手「武富士」が経営破綻

二〇一〇年九月二十八日午後、大手消費者金融の武富士が東京地裁に会社更生法適用を申請。事実上、経営破綻が明らかとなった。負債総額は六月末の時点で四三六六億円。保全管理人の小畑英一弁護士によれば、過払い利息の請求権者は最大で二〇〇万人、過払い金の総額も二兆円にも及ぶという。武富士破綻については、二十七日にまず『日本経済新聞』がスクープとして報道。これに続く形でテレビや新聞などの各メディアが「武富士が会社更生法の申し立てに」と次々に報じた。

これに対して、当初は「そうした事実はない」と強く否定していた武富士だったが、翌日には態度を一転。同法適用を申請するとともに、二十九日には記者会見も行った。武富士については、早くから経営的なかげりが指摘されていた。すでに業績は赤字が続いており、自力での経営再建は困難という見方が大勢を占めていた。今回の破綻も、驚く声は少なかった。だが、当然ながら同社の株価は暴落。東京証券取引所は、十月二十九日をもって武富士を上場廃止にすると発表した。

そして、利用者に対する影響は大きかった。債務整理や過払い金返還などについて、「これからどうなるのか」という動揺が広かった。これに対して、各地の市民団体や弁護士会、司法書士会などが相談会の開催や電話相談の実施といった動きをみせた。また、十月七日には武富士は都内で債権者説明会を開催。約五〇〇名の債権者が参加した。そのなかでは、武富士側に対して「過払い金の未払い分は返してもらえるのか?」「創業者一族の責任はどうなるのか?」などといった質問が相次いだ。

決済代行会社の功罪

出会い系サイトを舞台にした詐欺的な手口による被害は、二〇〇五年頃から表面化していた。これは、女性会員を装った、いわゆる「サクラ」を使って男性利用者を言葉巧みに誘い、「会いたい」という約束を取り付けては、実際にはすっぽかすという手口を繰り返すことで利用料を使わせ、後になって編された男性利用者に高額の請求が届くというものであった。この利用料金の決済に、クレジットカードが使用されたのである。国際ブランドのクレジットカードが使えることから、利用男性は信用してつい使い過ぎてしまったという点も否定できない。しかし、実際にはサクラを使った詐欺まがいのサイトであり、とても有名なクレジットカードの審査に見合う業者とは考えられなかった。

すると、そこに海外の決済代行会社の存在が浮かび上がってきたのである。被害に遭った男性たちは、詐欺的な手口によるものであるから、この請求は無効であると主張した。しかし、国内のカード会社は、「利用実績があるなら、支払いは免れない」とこれを拒否した。だが、実際に利用料金を請求しているのは、発行したカード会社ではなく、海外に拠点を置く決済代行会社であることが判明した。このような、海外の業者が介在しているケースでは、トラブルが発生すると、その解決が困難になるケースが少なくないという。国内のカード会社であれば、イシュアーとアクワイアラーはほぼ同一である。

つまり、カード発行会社が、同時に加盟店管理も行っているケースが定番である。トラブルが起きても、比較的速やかに解決が進むことがほとんどである。しかし、海外の業者が関係し、イシュアーとアクワイアラーが別である場合には、実際のカード決済を海外の業者が行い、その請求内容を国内のカード会社に送ってきているだけというケースになるので、事実関係の確認だけでもかなりの手間と時間を要する。ほかにも、決済代行会社がからむ被害事例として、競馬やパチンコなどのギャンブル攻略法の詐欺まがい商法がある。「必ず勝てる」「素人でも楽に副収入が得られる」などといったフレーズで顧客を集め、まったく効果のない方法を法外な金額で売りつけるというものだ。

同じように、「必ず儲かる副業」「みるみる痩せるダイエット法」などといった言葉で人の気を引き、やはりまったく実効性のない、紙屑同然の「ノウハウ」を、数万円という高額で売りつける、情報商材の詐欺的な手口も問題となった。これらすべてが、国際ブランドのクレジットカードを利用できたことから、被害が拡大したとも言われている。クレジットカードは手軽であるため、高額商品の購入にも抵抗なく利用してしまう傾向が強い。加えて、国際ブランドという信用性も無視できない。このように見ていくと、クレジットカードの「クレジット」の意味は、はたして全うされているのかという疑問が湧いてきてしまう。現在、日本国内だけでも膨大な数のクレジットカードが発行されている。年会費無料のカードも少なくない。しかし、同じ国際ブランドであっても、カード会社によってサービスや対応がまったく違ってくるケースがあるので、要注意だ。

たとえば、近年になって合併して出来た某カード会社などは、すこぶる評判が悪い。わたしが複数の弁護士や消費者関係の活動家などに、「サービス等の点でよろしくないカード会社はあるか?」という質問をしたところ、全員がそろってそのカード会社の名を挙げた。確かに、利用者にも不満が多い。とにかく、あらゆる点で対応が悪いという。トラブルが発生した場合などは、ほとんど何もしてくれないのと同様だそうだ。ある弁護士は、「ある程度のノウハウが蓄積された、たとえば銀行系の歴史のあるカード会社などは、それなりに対応してくれるので信用があります」と話した。総量規制の影響で、ヤミ金よりもまずクレジットカードの発行が増えるのではという指摘もある。だが、現金化や決済代行会社の問題など、クレジットカードについても注意しなくてはならない要素は少なくないといえよう。

決済代行会社の問題点

カード現金化業者がなぜクレジットカードでの利用で利益を得ることができるのか。そもそも、得体の知れない、実態のはっきりしない業者であるはずのカード現金化業者が、どうしてクレジットカードでの決済が可能なのか。そこには、最近になって問題点が次第に指摘されつつある、決済代行会社の存在を抜きにして考えることはできない。クレジットカードの管理には、顧客勧誘やカード発行業務などを行うイシュアーと呼ばれる部分と、加盟店の募集や管理を行うアクワイアラーと呼ばれる部分がある。このうち、アクワイアラーがすべての加盟店でのカード 管理を行うことは、その数の多さからほぼ不可能な状態にあるとされる。

そこで登場してくるのが、アクワイアラーに代わって加盟店の開拓とカード利用の管理を行う決済代行会社と呼ばれる業者である。カード会社には、VlSA、マスターカード、JCB、アメリカンエクスプレス、ダイナースといった国際ブランドがあり、その利用店加盟には独自の審査基準がある。通常、アクワイアラーはその基準に基づいて加盟店を開拓していくわけであるが、その効率化のために決済代行会社を使うことが慣例化している。そして、決済代行会社は開拓した加盟店のカード利用の決済を代行して行い、その手数料を収入とする。このご決済代行会社が、自らの権限において加盟店開拓を行っているのが現状である。

場末の飲食店などでも国際ブランドの各種クレジットカードが使用できるのも、こうした事情によるものである。このように、加盟店の開拓を進めたいアクワイアラーと、手数料収入を増やしたい決済代行会社との、両者の利害が合致しているため、このような慣例がまかり通っているというわけである。明記しておかなくてならないのは、決済代行会社というものが、その質において非常に大きな差があるということである。社会的な常識のもとに、コンプライアンスを重視して業務を行っている決済代行会社は少なくない。

そして、現在のように加盟店が非常に多くなっている現状では、決済代行会社に頼らざるをえないというのが現実だという。とくに、インターネットの普及とネットショッピングの増加によって、もはや決済代行会社の存在なしには業界は考えられないのだそうである。だが、その一方で利益だけを追求するあまり、国際ブランドの信用性にそぐわないような、営業内容に問題のある可能性が高い業者を加盟店にしてしまうような決済代行会社があることも事実である。その例が、出会い系サイトや競馬必勝法などの被害に、カード決済が利用されていたことである。