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貧困ビジネス「カードの現金化」とは

カードの現金化が消費者に不当な損害を与え、不正な行為であることは間違いない。まず、クレジットカードのショッピング利用であれば、翌月一括払いなら金利は発生しない。リボ払いでも、せいぜい年率で一〇パーセント程度である。実質的な金利は、「元本×年率÷三百六十五日×借入日数」という式で算出できる。つまり、十万円のショッピング利用で年率一〇パーセントとすれば、一ヶ月あたりの金利は千円にも満たない。つまり、差し引かれた一万五〇〇〇円を金利に換算すると、日歩で約四九四円、年率にして一八〇パーセントを超える高金利となる。これはヤミ金並の法外な利率である。そして、業者はあえて「還元率」という言葉を使う。すなわち、どういう名目で差し引くのかを明確に表現しないのである。

まして、金利などと言うことはない。この手の業者は、自らを「貸金業者ではありません」と称しているからである。しかも、多くの現金化業者は、その「還元率」の通りに利用者に支払うとは限らない。「手数料」とか「事務経費」などの名目で、さらに差し引くことが少なくない。「初めてご利用のお客様は、還元率通りのお支払いにならないことがあります」などと言うのはまだいいほうで、何の説明もなくあれこれ引かれるケースが珍しくない。そのため、一〇万円分購入、還元率八五パーセントで八万五〇〇〇円の現金化のはずが、実際には六万円程度にしかならないケースもある。こうなると、暴利もはなはだしい。

しかし、こうした現金化を利用する人々というのは、目の前の支払いに追われていて思考が停止してしまっているため、あるいは文句の言えるような余裕がないために、そのまま泣き寝入りのような形になってしまう。そして、一時的に現金を手にしたとしても、その後には一〇万円分の支払いという現実が待ち構えているのである。急場をしのいだつもりが、かえって借金が増えてしまったということになるわけだ。このように見ていくと、カード現金化業者というものは、一時期に激増した、いわゆる「都①金融業者」に大変よく似ている。インターネットで「クレジットカード現金化」といったキーワードで検索をかけると、こうしたカード現金化業者が山のように検出される。いずれも、「信用の実績」「お客様のニーズに合わせたご利用プラン」「違法ではありません」などといった文言で安心させようとしている。たしかに、現在の法律では、カード現金化業者を明確に違法と断定することは難しいかもしれない。

しかし、こうしたカード現金化という行為はカード規約で禁止されている「換金行為」となるため、発行会社は一切認めていない。カード業界ならびに大手カード会社では、会員に対して現金化業者の誘いに乗らないよう、ホームページなどで呼びかけている。また、カード会社では現金化そのものを規約違反として、会員に対して退会の手続きを取ることもあると警告している。庶民生活が困窮の度を深める中、こうしたカード現金化の被害は次第に広まる気配を見せている。国民生活センターに寄せられたカード現金化に関する相談や苦情は、二〇〇五年度から二〇〇九年度の約五年間で六九六件に及んでいる。そして、二〇〇九年度受付分の相談件数は、二〇一〇年三月の時点で二〇七件にもなっており、前年度同時期と比べて約一・七倍も増加している。この数字は氷山の一角と見られており、実際には相当な数の被害者が発生していると見られている。

貧困ビジネスを支えるクレジットカード

一方、消費者金融ほど注目されていないが、クレジットカード各社も苦戦を強いられている。そして、消費者金融が法規制による縛りが厳しくなっているのに対して、クレジットカードに対する締め付けは、従来に比べてそれほど強化されてはいない。まず、クレジットカードおよびカード会社そのものが、今回の総量規制の対象とはなっていないケースが多い。「アコム・マスターカード」のように、消費者金融がイシュアー(カード発行会社)になっているようなケースは別として、信販会社等のクレジットカード発行会社は、キャッシングに関しては消費者金融と同様に貸金業者として見なされるわけだが、実際には消費者金融ほどに厳しい審査をしているかどうかは疑問だ。

たとえば、インターネットで申し込みの受付をしているクレジットカードは少なくないが、ネット上での入力だけで契約が成立してカードが発行されるケースが珍しくない。消費者金融でもインターネットでの受付を行っている業者はいくつもあるが、それらは予備審査とでも呼ぶべきもので、正式な契約のためには収入を証明する書類を持参して、店舗または契約機で契約を済ませる必要がある。ところが、クレジットカードの場合は、発行会社によっても異なるが、ネットでの入力と申し込みだけで、数日後にはクレジットカードが送付されてくるケースがある。収入証明をカード会社に送付する必要もなく、収入に関しても自己申告だけでほかは一切不要である。キャッシングにしても、まったく同様である。

五〇万円以上の利用枠に関しては収入証明か必要となるが、それ以下であれば、やはり自己申告、書類不要で契約が成立する。いわば、カーローンなどとほぼ同じである。つまり、今日において、消費者金融が関連法規によって厳しい規制を受けているのに対して、クレジットカードの発行については、従来と同じように非常にゆるいままとなっているのが現状なのである。さて、このクレジットカードをめぐって、最近になって増える傾向にあるのが、「ショッピング枠の現金化」という手口である。この「カードの現金化」そのものは、とくに珍しいものではない。すでに九〇年代初頭から、街金の看板などに混じって、ガード下などでよく見かけたものと同じである。

そのシステムだが、以前はクレジットカードで購人した商品を転売して現金を得るという手口だったが、それでは得られる現金が大変に少なくなってしまうため、最近では別の方法を取る業者が多い。それは、まずクレジットカードの利用者が、現金化業者の指示にしたがって「指定された商品」をその業者から購入する。すると、その後で購入代金から業者が定めた分を差し引いた金額が、利用者に支払われるというものである。たとえば、指定された商品、業者は「オリジナル商品」などと呼ぶが、どのような商品なのか、その内容は明らかにされない。

とにかく、利用者は自らのクレジットカードを使って業者からその「商品」を購入する。すると、購入金額から一部が差し引かれて、利用者に銀行口座振り込みのような形で現金が支払われる。その後、購入した「商品」が利用者に送られてくる。以上が、「カードの現金化」の概要である。この現金化の理由は、電話やメールで済まされることがほとんどだ。業者も「来店不要」「全国どこでもOK」をうたい文句にしている。カードを利用してから、早ければ一時間以内に現金が支払われる。「××時までにご利用であれば、当日中にご送金します」などと、迅速さをうたう業者も多い。そして、後日送られてくる「商品」というのは、カー用品やアクセサリーなどから、何の価値のないものまでさまざまだ。

たとえば、パチンコ玉一個とか、つまようじ一本、そんな物が梱包されて送られてくることもある。要するに、「何かしらの物品を購入した」という見せ掛けでしかない。さて、問題は利用者が受け取る現金である。現金化業者は「還元率」という名称を用いる。その率は業者によって異なるが、八〇パーセントから九〇パーセントを提示しているケースが多い。つまり、還元率八五パーセントとする業者から一〇万円の商品購入をしたのであれば、八万五〇〇〇円か支払われることになる。これを見ると、一〇万円から業者が差し引くのは一万五〇〇〇円であるから、それほど悪質と感じられないかもしれない。また、形だけとはいえ商品を購入しているわけだから、違法ではないと思う消費者もいるかもしれない。

消費者金融業界の没落

消費者金融業界の没落については、法規制や過払い金請求の増加よりも、むしろ消費者金融が続けてきたビジネスモデルそのものにもともとの火種を宿していたという指摘もある。『高利金融』の著者でジャーナリストの北健一氏は、「大手消費者金融が行ってきた、中小零細の貸金業者にツケを回すというやり方がそもそも問題」だと指摘する。融資というものは、顧客の生産力=収入を利益として回収するのが基本である。しかし、消費者金融の場合、顧客の収入や経済力などは完全に無視する形で、いわば「何とか返している客には、とにかくいくらでも貸す」というスタンスで貸し付けを行ってきた。これは、顧客がどの程度の収入があるのか、職業的に安定しているのか、本当に返済能力があるのかなどは、まったく関係ない。

身売りしようが、ほかから借金してこようが、「返済すれば変わりはない」とばかりにジャブジャブと貸しまくって、それによって利益を生み出していた。その顧客の中には、当然、返済能力を超える者が続出する。すると、今度は別の消費者金融から借りる。それでも足りなくなると、今度は中小や零細の貸金業者から借りて返済する。こういう図式では、貸し手の業者は顧客の生産力ではなく、業界で滞留している資金を当てにしていることになる。極端なことを言えば、ネズミ講のようなものである。したがって、そのビジネスに限界があることは最初からわかっていたということになる。つまり、昨今の消費者金業界の没落は、貸金業者各社の体質によるものであり、法規制や過払い金請求増加などは、単に拍車を掛けたにすぎないという見方である。

今後、消費者金融に対しては厳しい状況となることは目に見えている。これまで長い期間にわたってグレーゾーン金利で貸し付けていた分、過払い金請求は当分の間続くであろう。また、二〇〇三年以降年々減少しているとはいえ、消費者の自己破産件数はまだ年間十万件以上と高い水準にある。さらに先日、国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」では、二〇〇九年の民間企業の平均給与は四〇五万九〇〇〇円で、前年を二三万七〇〇〇円も下回ったことがわかった。さらに、給与所得者のうち年収四〇〇万円以下が全体の六〇パーセントを占め、庶民の給与下落の傾向がさらに顕著となった形で現れた。こうした庶民の収入減が、消費者金融等の貸金業者の売り上げに大きく影響することは言うまでもなかろう。

総量規制の完全実施によって貸し付けできる金額が顧客の収入の三分の一までに制限されてしまうわけであるから、これまでのような「とにかく貸せるだけ貸す」という手は使えなくなるわけだ。こうした状況の中、消費者金融の従業員たちはどのように感じているのだろうか。「別に、とくにあわててもいないし、危機感もそれほど感じていないですよ」そう話すのは、某大手消費者金融に勤めるM氏(四一)数年前まで契約業務に就き、現在は回収部門で仕事をしている。「いちばん危機感があったのは、二〇〇七年頃だったと思いますよ。過払い利息の請求がグンと増えましたし、その頃からどこの消費者金融でも昔のようにいかなくなっていた。辞める人間も多かったですよ。とくに、業務停止命令を受けたアイフルなんて、かなり人が辞めたらしい」リストラや希望退職も、その頃が一番多かっだのではないかとM氏は回想する。

「最近は、もうそれほどでもないと思いますよ。人も減らしたし、昔は街中にやたらとあった支店や営業所、ATMなんかも、グッと少なくなりましたからね。以前は、田舎の県道沿いなんかにまでATMが置いてあったでしょう。考えてみれば、ちょっと異常だったんだと思いますよ」確かに、消費者金融そのもののATMなどは激減したと感じる。しかし、その代わりにこの三~五年で主要コンビニエンスショップ各チェーンに銀行ATMが急速に普及した。この銀行ATMで大手消費者金融の契約以外の業務、つまり借り入れと返済を行うことができる。その意味では、自社ATMをわざわざ置く必要も少なくなったともいえる。また、貸し出しが厳しくなっている現状も大きい。

「TVのCMなどでは、収入証明は五〇万円以上の契約にだけ必要だと思っている人がいるみたいですが、実際には二〇万円でも収入証明を提出してもらっていますよ。おそらく、同業他社でも同じだと思いますけれど。限度額に関係なく、少し前から契約には収入証明は必要になっています。総量規制が始まる前から、すでにどこでもやっています。もっとも、実際の収入の金額よりも、ちゃんと収入があるかどうかの確認の意味ですけれど」では、最近ではどのように変わったのだろうか。「やはり収入証明ですよ。先ほど言いましたが、五〇万円以下なら収入を証明する書類が必要ないと思っているお客さんがいますね。昔のように、収入は自己申告でいいと思って、来店してくるわけです。そして、もちろん自己申告だとOK。

でも、実際に書類を提出してもらうと、『あれこというケースが多いですね。収入証明が必要だと知ると、『また来ます』とか言って、そそくさと帰っていくお客さんも少なくない。それは、どこも一緒だと思いますよ」そうした顧客について、最近では何か変わったことはあるのだろうかと聞くと、「サラリーマンが厳しいらしい」という答えが返ってきた。「ウチはお客さんの話をよく聞くようにしているのですが、最近になって目立つのが、『給与の遅配が多くなった』と言うお客さんが結構いることでしょうか。給料の振り込みが遅れているから、家賃や公共料金の支払いに間に合わない。だから、ウチみたいなサラ金とかに借りようとする。そういうのが増えていますね。以前は、小さい会社でもサラリーマンの給料はキチンと支払われていたように思いますが、ここ数年、給料の遅配なんて珍しくなくなってきているみたいですよ」ちなみに、総量規制について、顧客と業者とで、現場が混乱したようなことはないのだろうか。

「他社はどうなのか知りませんが、ウチではあまり聞かないですね。まず、総量規制が始まるずっと前から、申し込みはかなり厳しくなっています。この六月からいきなり、給与明細を出してくださいとか、年収の三分の一しか貸せないとかなったわけじゃない。現場の混乱は、まったくないですよ。お客さんにしても、三〇万円くらい借りられればいいと思っている人がほとんどで、総量規制なんて知らない人が多いんじゃないですか。最近では、CMなどで耳にした人も多いみたいですね。なかにはゴネる人もいますが、たいていは納得しています」最後に、消費者金融というものが今後はどうなっていくと思うかを聞いてみると、「まったくわかりません。こっちが教えて欲しいくらい」という答えだった。

消費者金融業界の苦しい現状

二〇一〇年九月二十八日、大手消費者金融、武富士(本社・東京新宿区)が東京地裁に会社更生法の適用を申請し、事実上の経営破綻が明らかとなった。負債総額は四三三六億円。消費者金融各社については、すでに二~三年前から経営の危機が噂されていた。すでに二〇〇七年九月には、中堅の消費者金融クレディア(本社・静岡市)が七五七億円の負債を抱えて、やはり民事再生法の適用を申請した。また、大手では二〇〇九年にアイフル(本社・京都市)が「事業再生ADR」によって私的整理を開始、経営再建を進めている。かつては収益性の高さから優良企業と見られていた消費者金融各社は、二〇〇四年頃から次々と銀行の傘下に入っていった。

資金力を強化したい消費者金融と、リテール部門でのノウハウを獲得したい銀行の思惑が一致したような状況で、業務提携が進んだ。ところが、二〇〇六年一月に最高裁で、これまでは明確な法的判断がなされないまま運用されてきた「みなし弁済」を否定し、利息制限法を越える利息分について無効とする判決が下された。これによって「グレーゾーン金利」が否定されたことになり、利息制限法を越えて利用者が支払い続けていた、いわゆる過払い金の返還についての法的な根拠が得られたわけである。それまでも過払い請求というものは行われていたが、グレーゾーン金利を引き合いに出して支払いを拒絶、または消極的な態度しか取らない業者が少なくなかった。

また、顧客を電話でわざわざ呼び出し、「契約時の金利に対して異議を唱えない」などといった念書をわざわざ書かせる業者も存在した。また、貸金業者からの借り入れ契約を行う際、原則として契約時の金利がそのまま継続される。つまり、法律が改正され金利が引き下げられても、新たに契約を更新して金利の変更などを行わない限り、貸金業者は法律で定められた金利よりも高い利率で顧客から利息を取ることができたわけである。これなら、過払いに応じなければ以前と同じ利益を確保できることになる。それが、最高裁判決という法的根拠を得て消費者金融その他の貸金業者に対する過払い請求が急増。二〇〇六年四月から二〇〇九年八月までのわずか三年四ヶ月だけで、大手消費者金融四社への過払い金返済総額が一兆円を突破した。

すなわち、グレーゾーン金利が否定されたことにより、貸金業者は利息制限法と同じく年率二〇パーセント以下の金利を設定しなければならなくなり、収益力の低下を余儀なくされることになった。さらに、過払い請求を受けたら、これを拒絶することができなくなってしまったのである。これらによって、それまでは高収益を誇っていた消費者金融各社は軒並み大打撃を受け、アコムやアイフルは大幅減益となり、プロミスは赤字へと転落した。こうした事態に対して、あまりの想定外のことに戸惑ったのは消費者金融各社を傘下に収めた銀行だった。高収益が見込めるリテール部門を獲得したと思ったのが、わずか五年で利益を生み出すどころか、とんだ厄介者に変貌してしまったわけである。

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